市川ナツ

ラビット病

いつもどおり交番前に車がとまり、いつもどおりあたしは助手席に乗り込んだ。 いつもどおりって本当に便利だ。彼はきっと借りてきたばかりであろうCDを車のオーディオに移している。あたしはそれに合わせてなんとなく歌う。 「テケテケ言ってる」 げんなりし…

はいけい ぼくの

夜だね。こんばん星は見えません。小学校2年生のときのこと。 それってぼくらの出会うずぅっと前のことだけどきみにはそうぞうしてほしいんだ。 考えてみて。 七五三のあとにかみの毛をばっさり切ったくるくるのぼく。 ぼくは小学校2年生の生活の時かんに手…

お菓子の家

例うればお菓子の家と共にある鍋息の根夜中の攻撃あまりにも遠くにいます離れてては消えぬここは甘くやさしい一定のテンポがあって毎日が続くと苦しいわたあめかじる頬擦ればこわれる気色まだ曲は序盤安心できる音域遠回りして遠退いてみる好きになどできな…

夏の風

夏。 昼間は外に出るのが厳しいので、夜地道な生活を送る。 つまり仕事。 来る日も来る日も仕事に励む。 仕事はビルの中の話だし、涼しい。 夏は来ない。 バイトが終わってビルを出たときが一番問題。 頭の中はそこそこ冴えたまま、身体は夏に戻される。 駅…

春の虫

恋人でない人とあるようなないような待ち合わせをして、行く当てもなく夜の公園巡りをした。 電車の多い、ちいさな街だ。 どこへ行っても電車の音が消えない。 ふたつめの公園はモノレールの音が規則的にするところだった。 そしてまた同時に 季節はずれの虫…