たらこ

つい最近まで、キューピーのCM、たらこスパソースの歌が流行っていた。
わたしはあの「たーらーこーたーらこー」が「ららーぽーと ららーぽーと」に聴こえていたので、ああララポートはリニューアルオープンでもしたのだな、と思っていた。ちゃんとテレビを見ないで聞き流し状態だったので何のCMかよく知らなかったのだ。でも考えてみればわたしはララポートが実際なんであるのかはしらない。
おそらく千葉の船橋あたりにある大型のショッピングセンターだろうか。船橋ヘルスセンターと混合しているのかもしれない。
あの歌は印象に残りますね。女の子の単純な歌詞のリフレインが異国の民謡のようなさみしさと投げやりな余韻。かわいいのにどこか明るくはない。
流行歌というものはどこか合理的に分析しきれない部分があって、その分析しきれない闇ようなものに引きつけられる気がする。

不思議な童謡は時代の転換期によく流行るようで古来より人々は予言や予兆を童謡からたぐりよせようとしたようだ。澁澤龍彦のエッセイ「東西不思議物語」の中の「不気味な童謡のこと」には日本書紀の意味不明の流行歌の記録がのっている。「まひらくつのくれつれをのへたをらふくのりかりがみわたとのりかみをのへたをらふくのりかりが甲子とわよとみをのへたをらふくのりかりが」なんでしょうこれ?一説によると天皇新羅遠征の失敗の予言と考えられているらしい。
関東大震災の前には「昭和枯れすすき」、敗戦前には「さらばラバウルよ」などがはやったらしい。たしかに「さらばラバウルよ」の歌詞は当時の戦況を考えるとどこか投げやりな明るさがある。

童謡に実際予言が含まれているかどうかわからないが、同時代に生きる人々のもやもやとした不安や願望の微弱なサインが才能によって童謡や歌謡曲に加工され還元されてゆくのかもしれない。麻薬のように人々に陶酔を与えるために。

ひた走るわが道暗ししんしんと堪へかねかるわが道くらし 斎藤茂吉