中山洋祐

眠り猫

時々、友人の住むアパートに遊びにいく。長い付き合いで気楽にお酒を飲みとりとめもない話などすれば、いつしか酔いも回り眠くなって、そのまま泊まることもよくある。友人はパピルスという名の猫を飼っている。白地に黒の斑点がかかった牝で、若い頃はすら…

マンションを見にゆく

「マンションを買ったから見に来ない?」と大学時代の先輩に誘われ、小田原に行くことにした。平日昼下がりの小田急線はすいていて、昼寝でもしようかとも思ったけど本厚木を過ぎたあたりから春の風景が気持ちよくて、眺めているうちに眠る機会を失った。 小…

声を聴く。短歌絶叫ライブレポート

3月10日、吉祥寺のライブハウス曼荼羅にて福島泰樹の短歌絶叫ライブを聴く。 地下の広くないホールは40人程の人たちでほぼ満杯。焼酎ロックを飲みつつ開演を待つ。観客の年齢層は幅広く20代から70代くらいか。 7時半ステージに福島が現れる。マイクの周りに…

歌集喫茶うたたね・最終日レポート「神保町の戦い-後編」

「あえて言おう、地球連邦軍の奴らはカスであると!」…はっ階段を上がる一瞬にしてア・バオア・クー攻防戦におけるギレン閣下の演説の夢を見ましたよ。これって正夢みたいなやつ? で、二人で酒の抜けぐあいがピークの状態で練習。なんとなく静か。もう船は…

歌集喫茶うたたね・最終日レポート「神保町の戦い-中編」

13:00「啄木かるた」大会 はーきんちょうずる。だらしなくずるずるとしてると、天野さんの 「啄木かるたはじめますよう、まんなかのテーブルに集まってくださあい」 の懐かしきピンポンパンの酒井ゆきえ様のような声がする。 「ふわい」と何人かが集まり僕…

歌集喫茶うたたね・最終日レポート「神保町の戦い-前編」

なんだかんだで夢の一週間もいよいよ最終日。土曜日ということもあり昼過ぎに到着するともうかなりの人が集まっています。 A.Iさんは短歌朗読グランプリに向けて景気づけにギネスの樽生をすでに飲んでいます。僕もさっそく一杯といきたいが我慢してビルの廊…

バレンタインあるいは新田恵利のゆくえ

なるほどまたやってきましたね。資本家のバレンタインさんが甘い匂いを振りまきながら。あ、そこの中学生、うつむかなくったていいんです。あんなもんインフルエンザみたいなもんなんです。チョコなんてタミフルみたいなもんですよ。さあ早くいえに帰ってお…

アモーレ!!

皆さん、あけましておめでとうございます。 今年こそしっかりものの大人になりたいと思います。 もううっかりはうんざりです。 そしてこいびとが便座の蓋を上げっぱなしにしてもキレない大人を目指します。 とりあえず。歌を作ってみました。 週末に出てゆく…

那覇の茄子

何年かまえの晩夏、沖縄を旅行していた。離島から那覇に戻り、帰るまでの2日間を過ごした。 蒸し暑い真昼の国際通りのドトールでアイスコーヒーを飲みつつ僕はうんざりしていた。 なぜたどり着けないのか…。僕はかれこれ二時間ほど沖縄シャツの店を探して国…

マジックカーペットライド

11月も半ばを過ぎたのにもかかわらず山はほとんど緑だった。よく眺めれば山は杉ばかりで、これでは時期が来ても山一面が紅葉に染まることはないだろうと思う。 僕たちはバスを降りてケーブルカー駅へと至る参道を歩く。午後の空は雲が出始めているが太陽は…

たらこ

つい最近まで、キューピーのCM、たらこスパソースの歌が流行っていた。 わたしはあの「たーらーこーたーらこー」が「ららーぽーと ららーぽーと」に聴こえていたので、ああララポートはリニューアルオープンでもしたのだな、と思っていた。ちゃんとテレビを…

カフェ ボヘミア

返さなければならない本があったので、僕たちは一緒に住んでいたアパートに近い駅前の喫茶店に待ち合わせをした。 九月のはじめの光はまぶしいのに熱がない。 駅前のロータリーでは同じ車が秋の光を浴びながらぐるぐると回っている。急行の止まらない昼下が…

夏休み(瓶詰め)

ぴつたりとてのひらを伏せ白壁のつめたさをしきりあつめゐるなり 杉原一司小さい頃、夏休みが来るたびに病人になった。 八月が近づき、休みに慣れたあたりになると必ず扁桃腺を腫らしてしまい、ひと夏のほとんどを布団で過ごす羽目になった。夏休みになると…