かんたん短歌という爆弾の作り方〜短歌をはじめたわたしのために ver.0.1

「その話は長くなりますの?」
「…よくわかりません…。でも、長くなっても話しておきたいこともありますの…」

そんな会話はなかったわけですが、12月下旬のある日に時間つぶしのつもりでたちよったとあるブックオフ枡野浩一さんの『かんたん短歌の作り方(マスノ短歌教を信じますの?)』が500円で売られていたのでサクッと買ってしまったわけです。で、かなりサクサク読んだもので、今回はその感想をたらたらと書きたいと思いますの。*1

かんたん短歌の作り方―マスノ短歌教を信じますの?

かんたん短歌の作り方―マスノ短歌教を信じますの?

まず思ったのは、「短歌入門書」としてはちょっとわかりにくいかなー、ということ。
「「キューティ・コミック」に連載していたときの空気感を、できるかぎり忠実に再現したい」*2ということなので仕方ないかな、とも思いますが、「短歌教」というくらいなら、「教義」とでもして箇条書き的に「マスノ短歌ルール」の章を作って欲しかった。そういう項もあるにはあるし*3、各項のタイトルが「マスノ短歌ルール」になってはいるのだけれど、構成としてはわかりにくい…。「これを毎日復唱しとけ!!」くらいにわかりやすくまとめた章があってもいいんじゃないかなー、と思いました。

次にはなにより、イマドキの若手女性歌人の作品が少しまとめて読めたり、デビュー前の感じがわかって、とってもステキ!!いくつか好みの歌を紹介させていただきます。 *4

永遠にここにいるのも悪くない 雨宿りするTOWER RECORDS/西尾綾

日溜りに置けばたちまち音たてて花咲くような手紙がほしい/天野慶

東口バスターミナルでキスをして別れるために出会ったふたり/佐藤真由美

ゴミの日のゴミのとこにいるノラ猫はゴミじゃないと思うバスの中から/脇川飛鳥

あとは、「短歌界への憎しみ」*5が強く感じられちゃうのが、正直私はちょっとヒきます…。
私は短歌界人(狭い意味での)ではないので、全然怒りも憎しみもおぼえないのですが、もうちょっと楽しく詠もうよ、とか、もっと楽しく短歌を紹介してよ、と思います。
「「短歌を読む人」というのは、たいてい「自分でも短歌をつくる人」です。つまり短歌は、「読み手」と「つくり手」がイコールで結ばれている、すごく閉じたジャンルなのね。それだけならまだしも、「つくり手」が「読み手」でもあり、おまけに「評論家」でもあるのだから驚きです。」*6
とか言われても…。そういうジャンルは他にもいっぱいあるんじゃないかいな、とか、そんなこと短歌はじめたばかりの人に言われてもさぁ…、みたいに思います…。この指摘自体はすごいいいこと言ってると思うんですけどね。
この文章を読んで思ったのは、「つくり手」は「つくり手」として独立してていいんじゃなかろーか、いや、独立していて然るべきだ、ということ。その「つくり手」が「読み手」なり「評論家」として勉強するのは、単純に「つくり手」としてのスキルアップのためでいいはずで、他の人に言ったりしなくてもいいわけですから。「読み手」なり「評論家」としてスキルアップしたい欲求は、「つくり手」としてスキルアップしたい欲求と並行して起きるんだろうけど、基本的には別物として考えた方が良いのかなぁ、と。まあ、その辺がぐるぐると回り回ってるんだろーな、短歌界は…(短歌界に限らないけど…)。

でも、いい本だと思いましたよ、マジで。エキスを吸い取るにはちょっと考えて読まなきゃいけないところをのぞけば、良質な短歌入門書だと思います。
そしてなにより、この本そのものが愛にあふれてる!!*7私は魚喃キリコさんにラブ!!なので、『短編集』に「セロテープ」という作品が収録うんぬん*8というのを読んで『短編集』読み返したんですけど…。……載ってないですよねぇ……。これもオトナの事情なんでしょうかねぇ…。
魚喃キリコ短編集

魚喃キリコ短編集

と、ここまでたらたら書いたんですが、ブログでならうんぬん、ネット短歌がうんぬんという話にも飛べそうなんですが、私の手には余るのでパスします。でもってタイトルに混じってる「二読の価値のある」爆弾*9の方はまた次回、ということで。

*1:以下、2006年12月に読んだ感想(出版から6年)ということと、注のp.xxは『かんたん短歌の作り方(マスノ短歌教を信じますの?)』のページ数ということをふまえてくださいまし

*2:p.180

*3:pp.169-181

*4:pp.217-245。「作品集(短歌じゃないかもしれない症候群)」という章題はとても象徴的。順番は掲載順です。

*5:ままではないけれどp.250

*6:p.196

*7:というの皮肉じゃないです、マジで。ほんとにうらやましい、この本出版時の枡野浩一さんと同い年(32歳)で独身の小春川です。

*8:p.214

*9:p.101