歌集喫茶うたたね・最終日レポート「神保町の戦い-後編」


「あえて言おう、地球連邦軍の奴らはカスであると!」…はっ階段を上がる一瞬にしてア・バオア・クー攻防戦におけるギレン閣下の演説の夢を見ましたよ。これって正夢みたいなやつ?
で、二人で酒の抜けぐあいがピークの状態で練習。なんとなく静か。もう船は出てゆくのよ。
は〜と下に戻ると店内はかなり混んでいる。いつの間に結社のおねいさま、おじょうさま方も来て下さっていて挨拶をしたあとからくり人形みたいな動作で、歌クテルが誇るパティシエ、やこさんお手製のケーキを配る。
ふと店内照明が暗くなり舞台が照らされる。マイクスタンドがセットされ右手の審査員席に藤原龍一郎さん、北原久仁香さんが座る。出演者たちは出番をまっている。きんちようしすぎです。あなたお風呂にする?ご飯にする?それともア・タ・シ☆㍾㍽㍼健全なラジオ体操をした東貴之は偉大なり「すぎのー、杉野はいずこ!」

…まあこれまで散々騒ぎましたけど実は僕は正式な出演者じゃないんですな。気がつけば出演者申し込み終わってたのでA.Iさんのおまけというか実体のない式神枠で参加するのです。ええ、ですから出演者リストに名前などありませんよ。でもいいの、ひとりではこわかったし。

3:00
舞台に司会の松本キックさんが登場。それっぽい音楽もかかりはじめて(この前後から僕の意識は朦朧としてよく覚えてない)… マイクの前にいました。なんか死後の世界にいるみたい。不思議な感じがする。緊張して高揚してるのに感情が静かになっていく。僕はこれから何をするのだろう?店内の壁は鏡張りで僕の顔らしきものが映りながら揺れている。観客席は薄暗くてまるで夜のせせらぐ川みたいだ。この人たちは僕が右手を上げれば右手を見て、面白ければ笑い、見事な演技には感嘆し、つまらなければうつむくのだろうか。

僕は昔から自分の高揚感なんて信用できないけど今は朗読という演技に身を委ねたくなった。観客たちの視線の力が僕を抑え込むか解放するのかわからない、けどせいぜい堂々とやろう。

A.Iさんの指先がマイクスタンドに赤いリボンを結んでゆく。鏡の僕がほんの少しだけ皮肉に微笑んだ気がした。

スタートの合図だ。


終わり。